010PAY事件:アプリ商標の商品・役務の判断基準

Pine IP Firm
2026年7月14日

特許裁判所の2025ヘ10405判決は、モバイルアプリに表示された商標が、第9類のソフトウェア商品ではなく、アプリを通じて提供される役務の出所表示として機能する場合の判断要素を示しました。表示場所だけでなく、アプリの機能、利用目的、収益構造、決済方法および実際の取引対象が判断資料となります。

010PAY事件におけるアプリ商品と提供役務の判断要素

登録商標と確認対象

原告は、第9類のダウンロード可能なコンピュータプログラムおよび携帯電話用アプリケーションソフトウェアなどを指定した登録商標を保有していました。被告は、第36類のモバイル決済、電子金融取引、モバイル決済仲介などを指定した登録商標を保有し、「010PAY」アプリを運営していました。

原告は、アプリに表示された被告標章が第9類のモバイルアプリ商品に使用されているとして、積極的権利範囲確認審判を請求しました。特許審判院(IPTAB)は、標章の表示先はアプリであっても、実際の使用対象はアプリを通じて提供される役務であり、原告が特定した確認対象と一致しないため確認の利益がないと判断しました。特許裁判所もこの結論を維持しました。

アプリ商品と役務の区別

裁判所は、モバイルアプリが無体物であっても、独立した取引対象として提供され、利用者がアプリ固有の機能やコンテンツを取得・使用する場合には商標法上の商品となり得ることを前提としました。ただし、アプリの名称、アイコンまたは画面に標章が表示されるだけで、第9類の商品についての使用が成立するわけではありません。

判断の基準は、対価の支払と結び付く取引対象、および需要者が標章を何の出所表示として認識するかです。アプリが外部の商品・役務を利用するための媒体である場合、標章はアプリ自体ではなく、その役務または役務提供者を表示することがあります。

機能と利用目的

010PAYアプリでは、モバイル商品券の購入、決済、ポイントの蓄積・利用が行われました。利用者はアプリそのものを消費するのではなく、商品券を購入し、実店舗で商品と交換し、提携加盟店で決済するためにアプリを使用しました。裁判所は、取引の実質的な対象をアプリ外で利用される商品または役務と評価しました。

収益構造

被告の収益は、アプリのインストールや単純な利用ではなく、モバイル商品券の販売などの外部取引から発生しました。この点は、利用者が経済的価値を認識する対象がアプリではなく、アプリを介して成立する取引であることを示す事情とされました。

決済方法とアプリマーケットの取扱い

裁判所はGoogleおよびAppleの決済方針も検討しました。アプリ内で消費が完結するデジタルコンテンツ等にはアプリ内決済が用いられる一方、アプリ外で履行される商品・役務には外部決済が用いられる場合があります。本件ではアプリマーケット運営者のアプリ内決済ではなく外部決済が用いられており、アプリが外部取引を接続する手段であることを示す事情とされました。

積極的権利範囲確認審判の確認の利益

積極的権利範囲確認審判では、確認対象標章だけでなく、その標章が使用される商品・役務を実際の使用態様に即して特定する必要があります。本件では、原告が「モバイルアプリ」商品について確認を求めたのに対し、裁判所は被告標章が決済等の役務に使用されたと判断しました。この不一致により、審判請求には紛争解決に必要な確認の利益がないとされました。

出願時の指定商品・指定役務

  • アプリ自体のダウンロードまたは有料機能が取引対象であれば、第9類のソフトウェア商品を検討します。
  • 決済、金融、商品券、電子商取引、予約、仲介、配送、教育またはコンテンツ提供が事業の対象であれば、該当する役務区分を別に指定します。
  • アプリ販売、サブスクリプション、取引手数料、広告または仲介手数料など、収益源ごとに標章の使用対象を確認します。
  • アプリ内決済、外部決済、利用規約、アプリストア表示および利用者の取引手順を証拠として保存します。

権利行使前の確認資料

アプリの画面だけで使用商品・役務を確定することはできません。アプリストアの説明、利用規約、料金表、決済画面、売上の発生経路、商品・役務の履行場所、ユーザー動線および広告表示を確認し、審判または訴訟の確認対象を特定します。

参考資料

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