Jepsonクレームの先行技術自認と記述要件

Pine IP Firm
2026年4月28日

Jepsonクレームは、既存の構成を記載する導入部と、改良点を記載する特徴部分に分けたクレームです。米国の37 CFR 1.75(e)は、改良発明について、既知の要素または工程を記載した導入部、改良部分へ接続する表現、および改良部分を記載する形式を定めています。

Jepsonクレームの導入部と改良部分の記載方法

使用場面

Jepson形式は、既存構成と改良点を明確に区分できる一方、改良点を狭く示し、導入部に関する先行技術の自認と解釈されるリスクがあります。主要な独立クレームをJepson形式だけで作成せず、通常形式のクレームと併用するか、補助的なクレームとして使用することを検討します。

韓国における導入部の取扱い

韓国実務では、Jepsonクレームの導入部に記載された事項が、記載されたという理由だけで自動的に先行技術となるわけではありません。発明は導入部と特徴部分を含むクレーム全体で把握されます。

韓国大法院の2017年全員合議体判決は、明細書の背景技術またはクレームの導入部への記載が、常に出願前の先行技術の自認となるわけではなく、明細書全体と出願経過から出願人が先行技術として記載したかを判断する趣旨を示しました。誤記であることを示す資料があれば、その評価が覆る場合もあります。

ただし、意見書で「導入部の全てが先行技術である」「本願の特徴はDだけである」と断定すると、無効審判または侵害訴訟で不利な出願経過として用いられる可能性があります。クレーム、背景技術および意見書の表現を一貫させます。

米国における先行技術の自認

USPTOのMPEPは、Jepson形式の使用を、導入部の主題が他者の先行技術であるとの黙示的な自認として扱う旨を説明しています。二重特許拒絶への対応など、別の合理的理由が示される場合には、その黙示が覆る可能性があります。

韓国出願のJepsonクレームをそのまま米国に提出すると、導入部の全体が先行技術として扱われるリスクがあります。米国の継続出願、再審査、IPRおよび侵害訴訟を想定する案件では、通常形式の米国用クレームセットを別に準備します。

In re Xencorと記述要件

米国連邦巡回区控訴裁判所の2025年判決In re Xencorは、Jepsonクレームの導入部がクレームの限定である以上、導入部も十分な書面記述によって裏付けられる必要があると判断しました。発明は改良点だけでなく、導入部の対象に適用された改良全体として評価されます。

バイオ、化学、AIモデル、半導体工程などでは、「既知の抗体」「既知のニューラルネットワーク」「既知のエッチング工程」のような広い導入部が、書面記述または実施可能性の問題を生じさせる場合があります。導入部の構成と改良部分との関係を明細書に具体的に記載します。

ドラフティング方針

  1. 通常形式の独立項を確保する:発明全体を自然な構成で記載した独立項を先に設計します。
  2. 導入部を限定する:対象または技術分野を特定するために必要な構成だけを含めます。
  3. 導入部も裏付ける:構成、作用、改良部分との組合せを明細書に記載します。
  4. 意見書を調整する:先行技術の自認を必要以上に広げず、引用発明との比較に即して相違を説明します。
  5. 法域別に管理する:PCT、韓国、米国その他の移行国に応じてクレームセットを分けます。

機械装置の例

通常形式

1. ハンドル、ヘッド部、および前記ヘッド部に配置された弾性パッドを備え、前記弾性パッドが複数の隆起リブを含む清掃用ブラシ。

Jepson形式

1. ハンドルおよびヘッド部を備える清掃用ブラシにおいて、前記ヘッド部に配置され、複数の隆起リブを含む弾性パッドを備えることを改良とする清掃用ブラシ。

Jepson形式では「ハンドルおよびヘッド部を備える清掃用ブラシ」が導入部となります。米国では、この部分が他者の先行技術であるとの自認として扱われる可能性を検討します。

ソフトウェア・AIの例

「訓練済みニューラルネットワークで入力データを分類する方法」を導入部に置くと、その全体を先行技術として示す結果になり得ます。次のように工程全体を通常形式で記載する方法があります。

1. 入力データを受信する工程と、第一ニューラルネットワークモデルにより第一分類結果を生成する工程と、前記モデルの中間層出力に基づいて信頼度スコアを算出する工程と、前記スコアが閾値未満である場合に第二モデルを呼び出して第二分類結果を生成する工程とを含むデータ処理方法。

化学・バイオの例

「患者に既知の抗体を投与する治療方法において、Fc領域に特定の置換を有することを改良とする」と記載すると、「既知の抗体」と治療方法の範囲が不明確になり、導入部の記述要件も問題となります。対象抗体、置換、機能および比較対象をクレームと明細書に直接記載します。

1. C5タンパク質に結合する抗体を含み、前記抗体がFc領域にM428LおよびN434Sのアミノ酸置換を含み、当該置換を有しない対応抗体と比較してin vivo半減期が増加している組成物。

出願記録の整合

Jepson形式を使用する場合は、クレーム、背景技術、発明の説明、意見書、補正書および外国出願のクレームを一体で管理します。改良点が明確で、導入部に関する先行技術の自認、権利範囲の限定および記述要件上の負担を受け入れられる案件に使用を限定します。

関連資料をダウンロード