故意の特許侵害と増額賠償:特許法院2023ナ11276判決

Pine IP Firm
2025年4月30日
故意の特許侵害と増額賠償の判断

特許法院は2024年10月31日、調理容器用蓋の特許侵害事件(2023ナ11276)で、被告の故意を認定し、2019年7月9日以後の侵害による損害に2倍の増額倍率を適用しました。本判決は、制度施行前から継続する侵害への経過規定と、故意および倍率の判断事情を示しています。

特許法院2023ナ11276判決の損害額算定

事件の経過

原告A社は調理容器用蓋の特許権者で、被告C社は真空ポットを製造・販売していました。裁判所が認定した主な経過は次のとおりです。

  1. 2015年:被告は原告との取引関係とライセンス交渉を通じて本件特許を認識していました。ロイヤルティ等の条件が合意に至らないまま、同年11月頃に被告製品の製造・販売を開始しました。
  2. 2019年2月:原告は被告に侵害停止を求める通知を送付しましたが、販売は継続されました。
  3. 2019年6月以降:被告は無効審判と権利範囲確認手続を開始しました。特許審判院は2020年12月に被告の主張をいずれも認めず、関連判決は2021年8月に確定しました。
  4. 2022年10月まで:被告は関連判断の確定後も販売を継続しました。

故意の認定

裁判所は、被告が特許を認識していたこと、ライセンス交渉の決裂後に製造・販売を開始したこと、侵害停止通知後も販売したこと、無効・権利範囲に関する不利な判断の確定後も販売を継続したことを故意の根拠としました。

被告が提出した特許無効に関する専門家意見は、侵害開始後に作成され、法的拘束力がない旨が記載されており、実際の手続結果とも一致しませんでした。経営陣の交代も、侵害継続に関する会社の故意を否定する事情とは認められませんでした。

2019年7月9日前から継続した侵害

被告は、侵害が増額賠償制度の施行前に始まったため、増額規定を適用できないと主張しました。裁判所は、附則が施行日以後に行われた侵害行為を適用対象とする趣旨であり、侵害が施行日以後に初めて開始された場合に限定されないと判断しました。したがって、施行前から継続する侵害でも、2019年7月9日以後の行為による損害には当時の増額賠償規定が適用されました。

基本損害額

裁判所は特許法第128条第4項の侵害者利益の推定に基づき、被告の総売上約501億ウォンに、国税庁の単純経費率92.4%から算出したみなし利益率7.6%を乗じ、さらに本件特許の寄与率20%を適用しました。基本損害額は約7億6,000万ウォンです。

寄与率について、裁判所は本件発明が密封性能と外観上の差別化に関係する一方、被告の逆止弁、パッキン構造、ハンドル等の他の特許・意匠、資本力および販売活動も売上に寄与したと判断しました。

2倍の増額倍率

2019年7月9日から2022年10月31日までの損害約8,800万ウォンには2倍の倍率が適用されました。裁判所は、当事者間の規模と取引上の地位、故意の程度、侵害期間と数量、侵害による経済的利益、被告の財政状態および是正努力を考慮しました。

最終認容額は8億5,066万4,056ウォンで、これに判決が定めた期間別の遅延損害金が加算されました。

実務上の管理事項

  • 製品発売前のFTO調査、設計変更および調査結果を記録します。
  • 警告状を受領した場合は、対象特許、対象製品、侵害・無効論、販売継続の必要性を直ちに検討します。
  • 専門家意見は、依頼時期、前提資料、結論およびその後の対応を含めて管理します。侵害開始後に取得した形式的な意見だけでは故意を否定できない場合があります。
  • 審判・訴訟中に販売を継続する場合は、暫定措置、設計変更、供給停止、引当金および和解案を含むリスク判断を文書化します。

本判決は2019年当時の最大3倍制度に基づく事案です。その後の法改正による上限や適用時期は、各侵害行為の時点を基準に別途確認する必要があります。

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